2.骨組解析における軸線の採り方と断面定数の算定

 

 

 Q2.1  はりや柱の断面の図心とは何ですか,またどのように求めるのでしょうか?

 

 A2.1 鋼桁やコンクリート桁のような均質な部材の断面の図心は,部材断面を単位長さの厚さに輪切りした平板の重心を意味します.したがって,重心を関する平板の1次モーメント(断面1次モーメントと呼ぶ)はゼロになります.また,合成断面のように鋼とコンクリートの異種材料からなる部材断面の図心は,弾性係数の比率で密度を換算した同様の平板の重心になり,鋼の弾性係数を基準とした場合は,コンクリートフランジの幅を,ここに:コンクリートの弾性係数,とし,均質な断面と同様な方法で求めることができます.また,対称軸を有する断面の図心は必ず対称軸上にあります.

 さらに詳細な説明と関連する例題は,Chap.2(PDF)の中のP.8,例題2.1-1を参照してください.

 

 

 

 Q2.2 T形橋脚やラーメン橋脚の骨組解析における軸線の採り方についての留意点を教えて欲しい.

 

 A2.2 構造部材はすべて3次元体であるので,骨組解析を行なうときの軸線の取り方が大切になります.一般に,軸線は部材断面の図心に採るのが基本でありますが,コンクリート構造物では変断面であったり,隅角部にハンチがあったりして,断面図心をとおる線が複雑になるので,設計計算では,門形,T形やL形などの簡単な図形になるように軸線を採るのが普通であります.特に,径間長の大きい橋梁では,変断面による軸線変化の影響が少ないので,軸線の採り方をあまり気にする必要がないと思われますが,径間長に比べて,断面高さが十分に小さくないラーメン橋やT形橋脚では,軸線の採り方と断面応力算定時の図心の位置が関連しますので,注意が必要になります.

 たとえば,曲げモーメントと軸力を受ける部材の断面内の軸方向応力は次式によって算定されます.

                                 (2.3-1)

 ここに,は断面内の一つの主軸の回りの曲げモーメントで,:断面積,:主軸に関する断面2次モーメント,y:断面内の着目点の主軸からの距離であります.なお,主軸とは,断面の図心をとおる回転軸を意味します.

したがって,もし軸線が図心をとおらない場合は,骨組解析により求めた軸力()と曲げモーメント()をそのまま式(2.3-1)に代入することができなく,図心をとおる軸に換算したを用いなければなりません.

 さらに詳細な説明と関連する例題は,Chap.2(PDF)の中のP.11,例題2.1-4およびChap.5(PDFの中のp.53,例題5.2-2をご覧ください.

 

 

 

 Q2.4 骨組解析における軸線は部材の断面の図心をとおるのが原則とすれば,鉄筋コンクリート桁のようにひび割れの発生に伴って図心の位置が変化する場合はどうするのですか?

 

 A2.4 ご質問のように,鉄筋コンクリート部材の断面応力の算定では,ひび割れ断面を無視しますので,断面の図心はひび割れの発生とともに変化します.したがって,ひび割れ発生前の断面応力算定では,式(2.3-2)のような式が適用できますが,ひび割れ発生後では,式(2.3-2)の適用が煩雑になり実用的ではありません.

 以下,2.4-1(a)の逆L形の鉄筋コンクリート橋脚を例にとって説明します.

 

 

2.4.1 逆L形橋脚の軸線と断面形

 

はり部が変断面となっているので,骨組の軸線は図のようにはり部で傾斜するが,傾斜角が大きくなければ,はり部を軸線を図の点線のように水平に採っても構いません.要は,断面応力の算定に用いる曲げモーメントと軸力(内力)と外力によるモーメントと軸方向力のつり合い条件を正確に取りさえすればよいのです.ところで,柱断面の軸線は,配筋に影響するひび割れ前の図心をとおるのか,配筋に関係なく柱断面の中心をとおるのか,どちらでも良いのですが,一般に後者の方を用いているように思います.大切なことは,骨組解析では,軸線と採り方によって,断面力()の値が変わりますので,ひび割れ発生後の断面応力の算定に際しては,軸力の作用線は選んだ軸線に合わせる必要があります.すなわち,断面内の応力分布とつり合うは軸線をとおる点に関して取らねばなりません.

 の場合は,に対してはどの点に関しても同じ値になるので,問題が無いのですが,のときは,の作用線の採り方によって異なりますので,留意しなければなりません.特に,軸力が大きく,偏心量が小さいときは,の作用線の採り方によって,つり合い条件式が大きく変わりますので注意しなければなりません.

 さらに,詳細な説明と関連する例題は,Chap.1(PDF)の中のP.6,例題1.1-6をご覧ください.

 

 

 Q2.5 図2.5-2(a)に示すような,図心の鉛直荷重Pとy軸回りのモーメントMyを受ける橋脚断面が,当初設計では,幅が2.5m,高さが2mの長方形であったが,事情により,点線の三角形b-c-cの部分が欠落した断面に変更された場合,橋脚の軸方向応力度の計算法はどように変わるのでしょうか?

 

 A2.5 当初設計での橋脚断面の軸方向応力度は以下のとおりです.

                          (2.5-1)

 ここに,は圧縮を正とし,は断面積で,は図心をとおるy軸に関する断面2次モーメントで,です.最大応力は,の右上の角部に起こります.

 ところで,設計変更により,2.5-2(b)のように,台形a-b-c-dのような断面になった場合は,図心の位置が0'に変わり,主軸も1および2のように変わります.したがって,荷重Pの作用位置の主軸(1,2)からの距離をとし,主軸1x軸からの反時計方向の角度をとすれば,

                              (2.5-2)

 ここに,はそれぞれ主軸1,2回りの断面2次モーメント,は断面内の着目点の各主軸からの距離であり,は各主軸回りの曲げモーメントであり,2.5-2(b)を参照して,以下のように表わせます.

                            (2.5-3)

 (2.5-2)による具体的な計算については,Chap.2(PDF)の中のpp.16-17,例題2.1-10を参照してください.

 一般に,2軸偏心荷重を受ける柱断面の軸方向応力度を求めるには,断面の図心をに関する軸力と主軸の回りのモーメントに換算した値を用いなければならないと言えます.

  

(a)                  (b)

2.5-2 台形断面の主軸のその方向

以上