12. たわみに関連する問題
Q12.1 鋼主桁や床版の最大応力度が許容応力度以下であるにもかかわらず,安全性に対して,たわみの大きさがなぜ問題になるのでしようか?
A12.1 設計荷重の下での部材の最大応力度が許容応力度以下であるならば,鋼部材は弾性状態にあり,安全性に問題がないはずである.しかしながら,設計段階では,骨組や平板などににモデル化し,モデル構造の解析による部材の曲げモーメント,軸力やせん断力の最大値が,許容応力度以下になるよう部材断面の大きさするのが一般的ですが,実構造は3次元構造体で複雑な形状をしており,厳密な解析は困難であり,通常のモデル解析の応力度は実構造の応力度とは必ずしも一致していません.
たとえば,主桁の剛性が低く,活荷重によるたわみが大きいと,振動による路面の走行性の障害だけではなく,たとえ許容応力度以内に収まっていても,たわみの変動により,鋼桁と床版の取り付け部のような,部材の接合部に,適用したモデルでは算定できない応力(付加応力)が発生します.したがって,骨組や平板のような構造モデルによる設計でも十分な安全なように,付加応力の影響を最小限に抑えるために,活荷重によるたわみ値に制限が設けられています.
Q12.2 二次応力とはどのようなものを言うのでしようか?
A12.2 骨組やトラス構造の解析では,部材断面の図心をとおる線部材が結合したフレームとして取り扱っています.前問でも述べたように,実構造の応力は複雑で解析が難しいので,適用したフレームモデルによる応力を一次応力とし,これを基準に部材断面の大きさを決定する際に,一次応力に付加される応力を二次応力として考慮しています.
トラス構造では,部材の軸力による応力を一次応力であり,実構造の格点はヒンジではないので,格点の回転拘束による付加応力を二次応力と呼んでおり,前問でも述べたように,鋼桁と床版からなる構造では,鋼桁の不同沈下による床版の付加応力などを二次応力として取り扱っています.
Q12.3 線形弾性ばりと非線形弾性ばりのたわみを求める方法の違いを教えて欲しい.
A12.3 図12.3-1に示すように,弾性ばりとは,曲げモーメントと曲率との関係において,負荷径路と除荷径路が同じであるようなはりを言い,とが直線関係にあるものを線形ばり,曲線関係にあるものを非線形ばりと言います.線形ばりのたわみ解析法は種々ありますが,簡単な静定ばりのたわみは仮想力法を用いて以下のように求められます.
(12.3-1)
ここに,は求めようとするたわみの値,は曲げ剛性,ははりの任意位置(x)での曲げモーメント,はの位置と方向に作用した単位荷重()による曲げモーメントで,積分ははり軸に沿って実行します.たとえば,図12.3-2のような等分布荷重を受ける片持ばりのA点でのたわみを求める場合は,以下のようになります.
, (12.3-2)
線形弾性ばりの場合は,であり,よって
図12.3-1 曲げモーメント−曲率関係 図12.3-2 片持ばりのたわみ
(12.3-3)
となる.
つぎに,図12.3-2の片持ばりの断面の曲率と曲げモーメントが以下のような非線形関係である場合は,以下のようになります.
(12.3-4)
(12.3-5)
以上のように,仮想力法は線形弾性ばりのみならず,非線形弾性ばりのたわみ解析にも適用できることに留意して頂きたい.
なお、たわみの解析法の詳細については、Chap.7(PDF)を参照してください。
以上