7. 部材の曲げ強度に関連する問題

 

 

 Q7.1 道路橋示方書,コンクリート編では,T形断面の圧縮フランジの片側有効幅は以下のように与えられているが,これはどのようにして決められたものでしょうか?

                                   (7.1-1)

 ただし,:ハンチの有効幅,:支間長(単純桁),有効幅算出時の支間長(連続桁)であり,主桁の純間隔をとすれば,式(7.1-1)の適用範囲は以下とする.連続版および単純版の場合,片持版の場合,である

 

 A7.1 複数の並列主桁とRC床版が結合した桁橋の設計に際しては,一定の床版幅をフランジとして有する個々の主桁に分解して取り使うのが普通です.その際,着目する主桁のフランジ幅をどのよう採るかが問題になります.もし,主桁間隔が狭ければ,各主桁当たりの床版の全幅をフランジ幅とすることができますが,主桁間隔が広ければ,フランジ内の橋軸方向応力が一様にならず,主桁上に比べて主桁間の中央部で減少し,主桁間の床版の全断面がフランジとして有効に働かないことになります.このようなの主桁上から主桁間中央部に減少する現象をシヤーラグ(shear lag)と言い,その解析は面内荷重を受ける平板理論に頼らねばなりません.

 ところで,7.1-1に示すように,長方形断面の桁が片側のみにフランジ幅を有する場合,幅を下記により定義します.

                                 (7.1-1)

        ここに,は主桁の付け根のフランジ応力で,そこから距離yだけ離れた位置でのフラン応力をとしています.幅は,と見なしとき,全幅が有効としたときのフランジ幅であり,

 

    

 

   図7.1-1 片側有効幅            図7.1-2 主桁1の有効幅

 

有効幅(effective width)よばれています.したがって,7.1-2に示すような,左右に張り出したフランジを有する主桁1の全フランジ幅は以下のように与えられます.

                             (7.1-2)

     ここに,:主桁の幅,:張り出し部,径間部の片側有効幅,:ハンチの傾斜角が゜の領域,であります.ところで,(7.1-1)は,荷重分布や桁断面の形状の影響を受け,正確に算定するのは煩雑であるので,設計のための近似式が与えられています.

 さらに詳細な説明と関連する例題は,Chap.11.1(PDF)の中のpp.109-111,例題11.1-1をご覧ください.

 

 

 

 

 Q7.2 コンクリート部材断面の破壊抵抗曲げモーメントとは何ですか?また,許容曲げ応力度に基づく抵抗曲げモーメントとどう違うのですか?

 

 A7.2 破壊抵抗曲げモーメント()は,部材断面の終局曲げ耐力であり,圧縮縁がコンクリートの終局ひずみ()に到達するときの曲げモーメントを意味します.一方,許容曲げ応力度に基づく抵抗曲げモーメント()とは,部材断面の最大圧縮応力度がコンクリートの許容曲げ圧縮応力度()に到達するか,または鉄筋の最大引張応力度が鉄筋の許容引張応力度()に到達するときの曲げモーメントを意味します.たとえば,7.2-1の単鉄筋長方形断面のは以下のように求められる.

 

7.2-1 単鉄筋長方形断面の

 

 に対しては,7.2-1(a)の弾性応力分布より,ただし引張側のコンクリートは無視し,

    ,または,                     (7.2-1)

    ここに,で,は上縁から中立軸までの距離で,から決定し,としたときのとしたときのの小さい方の値を採用する.

 に対しては,7.2-1(c)の圧縮縁が終局ひずみでのひずみ分布に対応する7.2-1(d)の応力分布より,

     ,または,                     (7.2-2)

    ここに,およびコンクリートの応力−ひずみ曲線,,よりが求められる.なお,コンクリートの応力−ひずみ曲線,,は以下のように与えられている.

     では,          (7.2-3)

     では,                   (7.2-4)

     では,                          (7.2-5)

 また,終局ひずみは,設計基準強度()50N/mm2以下のコンクリートでは,0.0035と規定されている.なお,の積分値であり,計算が煩雑であるので,実用計算では,図7.2-1(e)に示すように,圧縮域の応力分布は長方形と仮定し,として,近似計算する方法が慣用されています.

 さらに,詳細な説明と関連する例題は,Chap.5(PDF)の中のp.51例題5.2-3をご覧ください.

 

 

 

 Q7.3 軸力と曲げモーメントを受ける鉄筋コンクリート部材での破壊抵抗曲げモーメントは,軸力が無い場合に比べてどのように変わるのでしょうか?

 

 A7.3 前問の図7.2-1(e)の近似応力分布において,軸圧縮力()が作用すると,つり合い条件は以下のように表わされます.

      ,                           (7.3-1)

                     (7.3-2)

    ここに,は断面の上縁から図心までの距離であり,Q2.3で述べたように,骨組解析の軸線の位置を断面の中心に選ぶならば,は断面の上縁から断面中心点までの距離になります.

   

7.3-1 の相関曲線

 

 つぎに,鉄筋に作用する力は,鉄筋ひずみが降伏ひずみより小さければ,より大きければ,になり,これらの式を式(7.3-1)および(7.3-2)に代入すれば,の関係がをパラメータとして求められます.の一般的な関係は図7.3-1のようになり,曲線:を相関曲線と呼んでいます.この相関曲線から分かるように,の時より,軸圧縮力があるときの方が,破壊抵抗曲げモーメント が大きくなりますが,軸圧縮力が増加するにつれて,コンクリートの終局ひずみに達するときの曲率(終局曲率)が小さくなるので,部材の曲げじん性が乏しくなり,ねばりの少ない部材になるので留意しなければなりません.

 さらに,詳細な説明は,Chap.5(PDF)の中のp.53,例題5.2-4をご覧ください.

以上