3. 荷重作用に関連する問題
Q3.1 土木構造の設計にはどのような種類の荷重が考慮されるのでしょうか?
A3.1 道路橋に対する代表的な設計荷重は,自重,自動車荷重,群集荷重,風荷重,地震荷重,プレストレス力などであり,温度変化,コンクリートのクリープや乾燥収縮による影響も一種の荷重作用とみなされ,車両による衝撃荷重も考慮することがあります.これらの荷重には静的に作用するものと,動的に作用するものがありますが,地震荷重以外では,通常の設計では,静的に換算した荷重を用いることが一般的であります.
Q3.2 衝撃荷重とはどのようなものですか?
A3.2 一般に,衝撃荷重とは,物体の衝突による動的荷重を言います.たとえば,車両が防護工などに衝突するときの最大荷重値()を正確に算定するのは難しい問題ですが,近似的には,衝突時の運動エネルギーと車両の変形を含む防護工のひずみエネルギーが等しいとして,以下のように算定できます.
,よって
(3.2-1)
ここに,:車両の全質量,:車両の変形を考慮した防護工の剛性,:衝突速度である.
一方,橋梁設計では,車両の走行が橋梁に与える荷重を静的荷重として取り扱い,動的効果は,衝撃係数を静荷重(L荷重)に掛けたものを付加して考慮します.道路橋示方書では,桁橋では,支間が短くなればなる程,静的荷重に対する衝撃の影響の度合いが増加しますので,衝撃係数()は,支間長(L)の関数として以下のように与えられています.
(1)鋼橋におけるT荷重およびL荷重に対して,ならびに鉄筋コンクリート橋およびプレストレストコンクリート橋のT荷重に対して
(3.2-2)
(2)鉄筋コンクリート橋のL荷重に対して
(3.2-3)
(3) プレストレストコンクリート橋のL荷重に対して
(3.2-4)
さらに,詳細な説明と関連する例題は,Chap.12(PDF)の中のP.121,例題12.2-1をご覧ください.
Q3.3 温度荷重とはどのようなものを言うのでしょうか?
A3.3 温度荷重とは,温度変化によって発生する部材応力の解析のための見かけの荷重を意味します.静定構造のように,温度変化による部材の変形に対する拘束がなければ,応力が発生しません.不静定構造のように拘束がある場合,温度変化によって発生する応力は,最初に,部材が完全に拘束されていると仮定したときに発生する応力を初期応力とし,これを解放する荷重を構造体に与えることにより,変形に伴う応力を求め,初期応力との和として,求めることができます.一般
図3.3-1 門形ラーメンの温度応力解析
に,このような初期応力を解放する荷重を温度荷重と呼んでいます.
図3.3-1(a)の門形ラーメンのはり断面が一様な温度上昇を受ける例において,線膨張係数を,はり断面の伸び剛性を,だ弾性係数,ははりの断面積,とすれば,最初に,節点2,3を完全に拘束したときの初期応力で,拘束力は,(圧縮)であり,これを解法する荷重(温度荷重):(引張)を図3.3-1(b)にように作用させたときの変形に伴う応力を算定すれば,はり断面の応力は,として求められ,柱断面の応力は,による変形に伴う解析により算定できます.
ところで,柱のたわみ剛性がはりの軸剛性に比べて非常に小さい場合は,柱頭の水平変位がとなり,柱下端の曲げモーメントがとなります.
なお,コンクリートの乾燥収縮やクリープに伴う応力の解析に対しても温度荷重と同様な取り扱いができますが,材齢に伴う剛性の変化も考慮する必要があります.
さらに詳細な説明と関連する例題は,Chap.9(PDF)の中のpp.91-93,例題9.2-1〜9.2-4をご覧ください.
Q3.4 風や地震による影響はどのように取り扱うのでしょうか?
A3.4 風や地震による影響は,本来,動的問題でありますが,設計では,静的に換算した荷重を用い
ることが多いようです.道路橋示方書では,風を受ける部材の単位面積当たりの風荷重は,以下のように採られています.
(3.4-1)
ここに,:空気密度,:設計基準風速,:抗力係数,:ガスト応答係数で,これ
らの係数は部材の形状に依存した係数として与えられています.
一方,地震による影響は,震度法に基づく静荷重に換算する方法と動的応答解析による方法が用いられており,詳しくは,後述の“耐震設計に関連する質問”を参照してください.
Q3.5 桁橋の設計における荷重分配法とはどのようなものですか?
A3.5 主桁と横桁とその上の床版からなる桁橋では,床版に作用する活荷重を主桁や横桁に分配して,各桁の断面設計を行なわねばなりません.活荷重の各桁への分配の方法(荷重分配法という)にはいろいろありますが,最も簡単な方法は,床版は隣接桁で支えられた単純版と見なし,単純はりの支点反力の影響線によって床版荷重を桁に分配する方法(0-1法と呼ばれることもある)であ
図3.5-1 荷重分配法
ります.
たとえば,図3.5-1に示す3主桁橋のL荷重の中の線荷重に対しては,着目する主桁(G1)に対して支点反力の影響線を考え,影響線上の荷重のみを考慮し,G1への荷重は,,ただし,は荷重作用面の影響線の面積,として求めます.なお,荷重分配法には,桁の沈下の影響を考慮した方法,桁橋を格子桁や直交異方性板と見なした方法など多種提案されており,
さらに詳細な説明は,Chap.4(PDF)の中のpp.42-45,例題4.2-1〜2をご覧ください.
以上