1.構造解析のためのモデル化

 

 

 Q1.1 構造物の解析のためのモデル化はどのように行うのでしょうか?

 

 A1.1 構造物はすべて3次元体であるが,構造解析のためには適切なモデル化を行わなければなりません.部材モデルには,はりまたはけたモデル,柱モデル,平板モデル,シェルモデルなどがあります.たとえば,図1.1-1に示すようなT形橋脚の上に載った桁橋に対しては,床版は面部材,けたは線部材,橋脚は骨組部材にモデル化するのが一般的です.

 

線部材とは断面寸法に比して長さの大きい棒状の部材であり,面部材とは2次元に広がった部材で,フラットなものを平板と呼び,曲面状のものを曲面板(またはシェル)と呼んでいます.各部材モデルに対する解析理論が多様に開発されており,それらははり理論,柱理論,アーチ理論,平板の曲げおよび膜理論,シェル理論などと呼び,はりや柱のような線部材の組合わせ構造に対しては骨組理論がよく知られています.構造解析は,対象構造物を上記の部材モデルの集合体に分解し,各モデルに対する解析理論を適用して,与えられた設計荷重(外力)の下で各部材に作用する応力(内力)又は変形を算定することである.しかしながら,平板モデルやシェルモデルによる解析は,骨組モデルによる解析より煩雑ですので,実用設計では,できるだけ骨組モデルに分解して,解析を簡便化することが肝要です.たとえば,平板の曲げおよび膜理論は,床版(スラブ)の設計や,薄肉箱断面からなる鋼部材の局部座屈のような特殊な問題のみに対して適用し,その他の構造解析には骨組モデルを適用するのが一般的です.

 さらに,詳細な説明と関連する例題は,Chap.1(PDF)の中の,P.1の例題1.1-1をご覧ください.

 

 

 Q1.2 設計のための構造解析には弾性モデルだけで十分なのでしょうか?

 

 A1.2 設計においては,設計荷重の下で,構造部材に作用する曲げモーメント,軸力やせん断力(断面力と総称する)の算定のための“構造解析”と,作用する断面力に抵抗する部材断面を決定するための“断面解析”があります.近年,限界状態設計法や性能設計法の採用により,破壊や修復性に対する安全性の照査には,部材断面の終局耐力や変形能の解析などの“断面解析”のレベルでは,塑性理論が適用されていますが,骨組部材に作用する曲げモーメントやせん断力の算定する“構造解析”のレベルでは,弾性理論を適用するのが一般的ですが,不静定系のコンクリー構造の解析では,弾性計算値を部材の塑性化による応力の再分配により修正する方法を用いることもあります.

 なお,本質問に関連して,後述のQ6.5,およびChap.7(PDF)の中のP.70,例題7.1-4を参考にしてください.

 

以上